KanaOhtsuki * One day One picture

■大槻香奈の日記■

三島由紀夫「翼」より

ume.jpg


:::

この日葉子は、英語の時間に面白い一章にぶつかった。
ウィリアム・ブレイクの簡単な評伝である。
その冒頭にあった次のような一節が、たまたま葉子の心琴に触れたのである。

「幼時、ブレイクは一人野に出て遊んだ。すると、とある大樹の梢に、大ぜいの天使が群がって
翼をうごかしているのを見た。彼は家に走りかえって、このことを母に告げた。
母は信じなかった。却って幼いブレイクの迂愚をなじって、彼を打擲した」

葉子は教師の訳読をききながら、何度もこの冒頭の部分ばかり読み返した。
少女にまじめな推理が生れた。

『天使を見たことについては子供のブレイクだって半信半疑だったにちがいないわ』
と彼女は考えた。
『ブレイクがそれを本当に信じるようになったのは、お母さんに打たれた時からにちがいない。
お母さんに打たれることが、罰せられることが、それを信じるためには必要な手段だったのにちがいない。
先生のようにただブレイクのお母さんを嗤うのはまちがっているわ。
お母さんはその場合、御自分の役割に忠実だっただけだ』

:::

三島由紀夫短編集『真夏の死』の「翼」より抜粋

Top

HOME

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

作家 : 大槻 香奈

Author:作家 : 大槻 香奈
美術作家/イラストレーター
お問い合わせは以下の大槻香奈Webサイトよりお願い致します。

http://ohtsuki.rillfu.com

2243277_3246444182_bigger.jpg